埼玉県では市街地でも害獣の被害が増えています。

害獣被害というと山の奥での農作物への被害というイメージですが、近年は市街地でのイタチ、アライグマ、ハクビシンなどの家に住み着くタイプの害獣の被害が増えています。これはなぜなのかと、害獣駆除とはどういうことをするのかを説明します。

埼玉県で増える害獣被害

東京に隣接し交通網も充実している埼玉県は、東京のベッドタウンであると同時に近郊農業が盛んです。鳥獣による被害は、かつては中山間地である秩父地域でサル、シカ、イノシシなどが問題になっていましたが、今では生息地が市街地にも拡大しています。
例えばアライグマの被害でいうと、2006年に450頭だった捕獲数は2016年には5244頭になっています。捕獲された場所も23市町村から58市町村に倍増しました。当初は秩父地域や匹地域など中山間地や丘陵での被害や捕獲が多かったのですが、数年で隣接する区域にも拡大し、今では県内のほぼ全域で生息が確認されています。

害獣のエサと棲みか

これは個体数が増えると同時に認識補足される数が増えたということもあります。原因はエサと棲みかです。
エサでいうと農作物被害として把握されることが多く、被害となる農作物と被害とならない農作物があります。被害とならない農作物とは、農家収入とは無関係の放任果樹、廃棄果実などです。また被害に対する意識の比較的低い家庭菜園や庭の果樹にも当てはまります。
棲みかでいうと、市街地や都市部に生息域を広げている理由の一つは建物の数と考えられます。建物に依存して生活するのであれば農村部よりも市街地を選んだほうが好みの棲みかを探す選択肢が多くなります。

ハクビシンやアライグマは、ねぐらを建物の中に作ることが多く、また天井裏や壁の隙間などの狭いところを好みます。このねぐらは行動範囲の中に複数あり、ハクビシンやアライグマはこれを転々と移りながら生活しています。この移動生活は餌場と密接な関係があります。とくにハクビシンの場合、夜中に一度休息してから朝方まで餌を探して行動します。そのためハクビシンは餌場の近くにねぐらを作ります。逆にいえば、繰り返し被害が発生する場所には、必ず近くにねぐらがあると考えられます。

このねぐらは時期によっては出産場所ともあります。静かでもっとも安心できるねぐらが選ばれることになります。

狙われやすい建築の構造というのもあります。昭和30年代なかばから昭和40年代後半にかけて建築された建物の侵入率がもっとも高いです。木造モルタルの家の壁の隙間を断熱材で埋めたような構造がアライグマには都合が良いです。そしてただでさえ狙われやすい構造に、増築や改築で手が加わると、隙間が生じやすくなり、さらに侵入されやすくなります。

埼玉県で害獣が増える理由

つまり、埼玉県というのは、

- 元々の自然環境は高山でも砂漠でもなく、丘陵や森が多く木の実や小動物や魚など生物が豊富で、害獣が生息するのにそもそも適した環境。
- 昭和30年代半ばから昭和40年代後半に開発されて都市化された。そのころの家が増改築しながら、空き家だったり高齢者が住んでいたりする。またそういった家が近隣に点在している。
- もともと近郊農業地域だったところを住宅地として開発していったので、住宅地と農地が混在している。山が一つ消えるような大規模開発よりも、家屋数件〜数十件程度の小規模な開発が多い。
- 農地から住宅地への開発は年度に幅があり、開発中だったり、古い農家が取り残されていたり、里山が一部分だけ住宅になり一部分だけそのまま残っているなど、今どういう状態にあるかはさまざま。
- もともと農業地帯なので用水路や排水路は発達しており、暗渠なども作りながら縦横に張り巡らされている。

歴史的な事情から上記のような状況にあるわけで、まさにアライグマやハクビシンにとって快適な環境であるというようにいえます。

かつては人と野生鳥獣の間には見えない境界があって、お互いに棲み分けができていました。この境界線を保っていたのが「山の暮らし」でした。山の暮らしは林業や林作物や養蚕から成り立っており、山との結びつきの強い生活でした。そのため山中や林縁、集落周辺には常に人の圧力がかかっている状態でした。安定した山の暮らしが野生鳥獣とのバランスを保ってきたのです。

しかし「山の暮らし」が衰退し人々の生活の中心は山里から町に移っていきました。それまで集落周辺にかかっていた人の圧力が低くなり、野生鳥獣は山から田畑へと出没するようになりました。かつて、高度成長期に山と人里の間で起こったことが、今身近で起こり始めているといえます。高度成長期に開発された「東京のベッドタウンであると同時に近郊農業が盛ん」な「大都市と山の間の地域」である埼玉県で害獣被害が増えているのはこういう理由からになります。

害獣駆除とは何をするのか

イタチ、アライグマ、ハクビシンなどの民家に棲み着いてしまう哺乳類を害獣といっています。これらは人間に害意を持っていたり人間の天敵であるというものではなく、その生態と人間の生活様式が重なってしまったために害獣となってしまったものといえます。

法律的にもハクビシンやアライグマ、イタチは鳥獣保護法で守られており、自治体の許可無く殺処分できないものです。鳥獣保護法とは、自然の中では食物連鎖で食べる・食べられるという関係が成り立っているので、鳥や獣を勝手に狩ると自然のバランスが崩れて、そこから恩恵を受けられなくなってしまうので、狩りや駆除を勝手にしてはいけないというものです。鳥獣保護法で守られた動物はたとえ害獣であっても勝手に駆除をすることはできません。各自治体に申請を出して許可をもらわなければいけません。また、家に住み着くタイプの害獣の駆除に用いる箱ワナは狩猟道具の罠の一つであり、罠を使って動物を捕獲するときは基本的に狩猟免許が必要です。しかし、害獣による被害防止が目的で、自宅敷地内で小型の箱ワナを使用して捕獲するという場合には狩猟免許は不要としている自治体もあります。

アライグマが日本に入ってきたのは1970年代にペット用としてですが、その後ペットを野生に放逐したり、脱走するなどして、野生化していきました。アライグマによる被害が深刻になると対策を求める声が強くなりました。日本哺乳類学会はアライグマを含む3種類の外来種の駆除を求める大会決議を1998年に採択し、日本生態学会は日本の侵略的外来種ワースト100の一つにアライグマを選びました。そして2005年に外来生物法が施行されると特定外来生物に一次指定されました。
このようにアライグマは外来生物法に基づく特定外来生物に指定されており、アライグマを自分でつかまえることはできません。取り扱いは法律によって定められており、法律に沿って駆除をする必要があります。

害獣駆除は位置づけ的にも実務的にも地方自治体との協力が欠かせないものとなります。害獣駆除とは、法律や自治体の方針にしたがって、害獣を追い出し、進入路を塞いで他の個体に再利用されないようにし、被害箇所を清掃・消毒して二度と害獣が棲み着かないようにする環境改善工事を行うこととなります。

害獣被害を抑制する上で大切なことはその住宅を害獣にとって魅力のある場所でなくすことです。生ゴミをそのまま放置せずに蓋の閉まる容器に入れたり、雑草を払ったり、屋根にかかって侵入経路になっている枝を払うなども必要になります。

また、害獣が棲み着いていたことによって家屋が損傷している可能性があります。断熱材が巣の材料として使われていたり、壁が壊されていたり、糞尿で天井や壁にシミができていたりするなどです。こういった場所の修繕も害獣駆除の一環として必要なことになってきます。